対談3:日本の住宅寿命について
− ハウスメーカー徹底比較編集部(以下:編):日本の住宅寿命は、平均しておよそ30年と言われていますが、これはO氏からみてどのようにうつりますか?
建築家O氏(以下O氏):おっしゃる通りで、世界的に見ると、日本の住宅の寿命は非常に短命だと思います。
欧州では、150年以上持つ住宅がほとんどですし、アメリカに至っても90年近く持っています。
− 編:なぜ、日本の住宅寿命はこれほどまでに短命なのでしょう。
O氏:様々な理由が考えられますが、まず、第一の理由としては、日本特有の風土が挙げられると思います。
例えば、日本は高温多湿の国ですので、快適に暮らすためには、湿気をどのように取り除くかということを、家づくりの現場で生かさなければなりません。
湿気というのは、住宅にとって非常に悪さをしますので、通気を良くしたり、内部結露が発生しないように、しっかりと施工をすることが、非常に大事な考え方になります。
− 編:日本では土壁が使われていましたよね。
O氏:土壁は湿度を通すため、通気性に優れており、結露を抑制する効果がある反面、冬場は非常に寒くなります。
また、地震に弱く、崩れやすいという特徴もあります。
ただし、その反面、壊れた部分は、比較的簡単に修正することができます。
− 編:通気性が悪いとどうなるのでしょうか。
O氏:湿気が溜まり、内部結露が起きたりし、やがては、建物躯体にダメージを与え、住宅の寿命を短くしてしまいます。
大手ハウスメーカーが建てる住宅は、現在、外壁材としてサイディングを使用することが一般的となっていますが、実はサイディングは、通気性が悪いという側面があり、一旦建物内部に雨水が浸入してしまうと、湿気が溜まってしまい、やがては建物にダメージを与えてしまいます。
これを、問題視して現在はサイディングと柱の間に、通気層を設けていますが、実際は根本的な解決策には、至っていないのが実情と言えます。
− 編:つまり、高温多湿の日本の住環境において、内部結露が住宅の寿命を著しく低下させているということですか?
O氏:そういう側面もあります。
もちろんそれだけではなく、建物に対する考え方や、付き合い方、広く言えば文化が違うので、そうした、あらゆる要素が重なり日本の住宅寿命を短くしているのだと思います。
− 編:文化の違いが住宅の寿命を短くさせていると。
O氏:文化の違いを含めた、複合的な要素が住宅の寿命を短くしているという意味です。
もともとハウスメーカーは、戦後生活が豊かになっていくにつれて、持ち家が欲しいというリクエストに、答えるような形で生まれたという背景があります。
つまり、ある程度品質を保ったまま、住宅を大量供給するには、工業化をしなければならない。そうした背景があるということは押さえておくべきだと思います。
ハウスメーカーが生まれるまでは、地元の工務店、または大工さんに家を建てて欲しいとお願いしに行って、家を建てていましたから、品質が担保された状態で大量に供給するのは難しかったんです。
− 編:どのハウスメーカーも工業化することで品質が安定すると言っていますよね。
O氏:はい。そういう側面もあります。
ただ、素材がいくら安定的に供給できても、つくるのは人間ですから、しっかりとした設計と、抜かりない施工が大事になってきます。
その両方のバランスがあってこそ、本当の意味でいい家を建てることができます。
ですから、工業化するということは1つの選択肢であって、それが答えではないと私は思っています。
− 編:工業化したことでどのようなメリットやデメリットがあるのでしょう。
O氏:一番のメリットは、ある程度の品質を保ったまま、工期を短縮できるところだと思います。
資材は現場ではなく、しっかりと管理された工場で生産しますから、品質のばらつきを防ぐことができます。
また、工場で大量生産するので、資材あたりの単価を安くできたり、安定的に供給できたり、工期を短くし、大量に住宅を供給できるようになります。
一方で、工業化製品は画一化された商品になるので、間取りに制限がかかります。
決まった規格で、生産していますので、細かい要望に応えることは、難しくなってしまうという側面もあります。
ハウスメーカーの基本的な考え方としては、品質がある程度担保された住宅商品をより早く、より製造コストを下げて建てるということを目的としていますので、その辺りの考え方にも、違いは見られるのだと思います。
− 編:考え方の違い・・・つまりは、先ほどの文化の違いということでしょうか?
O氏:文化もそうですが、根本的な家に対する考え方の違いです。
私は、工業化が悪いとは言っていませんが、効率化を推し進め過ぎると、それはもう品質の悪化につながり、耐用年数はもちろん、住宅の寿命を著しく悪くしてしまいます。
例えば、日本では壁紙として、クロスが使用されていますが、安価に内装を仕上げることができる反面、ビニールなので調湿性がなく、使い方を間違えると、湿気が溜まりやすくジメジメとした室内環境になってしまいます。
結果として、内部結露が生じ、その結露が柱などに染み込み、腐らせてしまい、寿命を短くしてしまいます。
つまり、日本で建てられる、ほとんどの家は、見た目がどんなに美しくても、コストを削減するために、調湿性がない、または調湿性が考えられたつくりをしていない、つくりになってしまっています。
海外に住む友人は、これを揶揄して、日本の住宅はビニールハウスだらけだと言っています(笑)
− 編:ビニールハウス(笑)
O氏:もう笑うことしかできません。おっしゃる通りでございますとしか、言いようがないですから。
− 編:とにかく日本の住環境では、湿気を逃がす対策が大前提として必要であるということですね。
O氏:そうです。
特に、見えない部分での、内部結露は非常に建物に対して悪さをしますから、しっかりとした対策が取られているのかを、専門的な目で見て、選び、比較する必要があると思います。
つまり、換気対策は十分か、湿気を逃がすような工夫がされているかなどです。
また、鉄骨住宅に至っては、建物内外部の温度差から生じる、ヒートブリッジにも注意する必要があります。
− 編:ヒートブリッジとはどのような現象ですか。
O氏:夏場など、コップの周りに水滴が溜まりますよね?
冬場の満員電車で、暖かい空間の部分の窓に、水滴がつく現象と捉えてもいいと思います。
つまり鉄は、外と内の温度差によって、内部結露を起こしてしまうんです。
だから鉄骨住宅では、外断熱を施すことで、熱を逃がさないような工夫が必要となるのですが・・・・まあ、これ以上はここで詳しくはお話しないので、まずはご自身で調べてみてください。
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